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製品開発における失敗談や苦労話などの『開発秘話』、デュプロのプロダクトを支える技術、デュプロスタッフの横顔などを語ります。

  • 製品開発

カッタークリーサDCシリーズ  プロジェクトストーリー1

急速に拡大するプリントオンデマンド(POD)市場とともに、世界的な規模で広がりを見せるのがデジタルカラープリンタ用後処理機・カッタークリーサDC シリーズ。 将来性のあるマーケットとして競合がひしめく中、トップブランドとして名乗りを上げるDC シリーズのサクセスストーリーを紹介します。

IT時代の印刷方式として注目度が高まっているプリントオンデマンド

1998 年、カッタークリーサ DC シリーズの初代「DC-535」流通はしたものの、売れ行きに一抹の不安が・・・

大原
そもそもは、アメリカの大手デジタルプリンタベンダーからの要請で、DC シリーズの開発がスタートしました。要望は「プリント余白部分の裁断」。用紙の四方に余白のできるデジタルカラープリンタの後処理機として、プリントした用紙の余白部分をカットする機械をつくってほしいというものでした。


米田
当時、デジタルカラープリンタで印刷した用紙の余白カットには、どの企業も苦労していましたからね。私たちも、世界的に広がりを見せはじめたPOD市場向けに、トータルワークフローを提供すべく、製品開発と生産に乗り出したわけです。


大原
開発にあたり“余白部分のカット”という点では、技術的に問題はなかったです。ただ、用紙の厚みの関係で給紙システムがスムーズに流れず、意外なところで苦戦。そんな中、試行錯誤を繰り返し開発したのが、デュプロ精工初のエアー給紙システムを搭載したDC シリーズの初代機「DC-535」です。


和田
ただこれが、まったく売れませんでしたね。エアー給紙システムで大胆に送る裁断機のアイデアは、当時としてはかなり画期的なもので技術屋は飛びついたものでしたけど(笑)。


大原
つくったものの、売れない…それは“なぜなのか”に辿り着く重要な「マーケティング」の要素が構築されていなかったためでしょうね。


米田
自分たちの製品が、どういったお客さまに、どのような仕事のために使っていただくものなのか…市場の状況や売り方なども含めて、すべてが認識不足でした。ただ、これをきっかけに製品そのものの本質を理解し、マーケティングに力を入れるようになりました。

カッタークリーサ DCシリーズの歩み
デュープリンターDP-Fの開発スタッフ
1998年/DC-535 用紙の余白をカットするDCシリーズの初代機。デュプロ初のエアー給紙システム搭載。
2000年/DC-545 スリット、カット、クリースの処理を1回の通紙で行うカッタークリーサ。DCシリーズの原型となりました。
2002年/DC-545HCEX デュプロのオリジナルコンセプトを盛り込んだDC-545HCEX。今日の飛躍の足掛かりとなりました。
2005年/DC-645 POD市場の成長の波に乗って、デジタルカラープリンタの後処理機としての地位を築いたDC-645。
2007年/DC-615 DC-545HCHXがDC-615へとモデルチェンジ。DC-645とのラインアップでお客様を強力にサポート。

2000年、さらなる改良! DCシリーズ「DC-545」待ち受ける落とし穴と、ひるまぬメカ屋魂

大原
余白部分のカットを実現したDC-535が完成したころ、さらにベンダーからの要請があり「DC-545」のプロジェクトがスタートしました。カードや名刺を作成する裁断機能に加え、折り目をつける「クリース機能」を搭載したのです。


米田
というのも、当時ベンダーはバースデーカードやパーティーの招待状など、親しい人との間で取り交わすカードを自分だけのデザインで手軽に作れるシステムの販売を計画していました。その後処理部分を担うパートナーとして当社に声がかかり、アメリカに向け相当な台数の注文が入ってきました。DC-535と比べ約5倍。生産ラインもフル稼働でした。


大原
ただ、ここで大きな落とし穴が待っていました。ベンダー側からまさかのプロジェクトの中止の連絡が。さらに輪をかけるように、電気部品の不良や梱包の不備など、輸出したもののぞくぞくとクレームが出てくるようになって…。当時は輸出の梱包規定もなく、それは乱雑な運び方をされていて箱もマシンもボロボロだったのを覚えています。われわれ開発者自身が、輸出した現地に飛び、修理や在庫機の改造に明け暮れましたね。


和田
たとえプロジェクトが中止されても、それまでに生産された製品は大量に残っています。またデュプログループの販売会社からも、DC-545のコンセプトは必ず売れると熱い期待が寄せられていました。ならば、メーカーとして自分たちでマーケティングした内容を盛り込んだ完全オリジナルの「DC-545HCEX」を開発しようと、動き始めたのです。


米田
実際、この頃は開発者が現場に行っても知らないことばかりで、目の前の状況に対応するのが精一杯。それでも、お客さまの仕事の環境や内容を実際に目にすることで、開発メンバーの心に変化が見え始めました。


和田
"開発者"の視点と"使う人"の視点。これはまったく違うもの。それを現場で改めて気づかされました。実際に使って頂いているお客さまの現場を知るため、アメリカやイギリス、ドイツなどを飛び回りました。修理も兼ねてですけど、ドイツの片田舎に1週間ほど缶詰にされたこともありましたよ(笑)。


2002年、満を持して誕生!オリジナル「DC-545HCEX」開発意欲が高まるラインアップもぞくぞく

DCシリーズ

和田
DC-545HCEXに取り入れたのは、まず人手のかからない大量自動給紙。さらにさまざまな仕事に対応するため移動式のスリッターの数を増やしました。開発者一人ひとりが自ら歩いて集めた情報と、グループ内の販売会社の知識と知恵を集結させ、待望の完全オリジナル自社製品を世に送りだすことができました。


太田
カードタイプや名刺タイプなどプログラムを識別させる「CCDバーコードリーダ」も搭載。また従来から頭を悩ませていた印刷位置のズレは、「レジストレーションマーク」を用紙の端に印字することで解決。こちらは特許も取得しています。


米田
今までのDCシリーズの努力を結集して完成させたDC-545HCEX。製品として性能の安定だけでなく、お客さまの要望を私たちメーカーと販売サイドで共有できるようになったのは大きな前進。前機種のDC-545を上回る出荷台数が結果となって現れてくれました。ちょうどアメリカやヨーロッパのPOD市場が右肩上がりだったこともあって、ようやく出荷台数も安定し、マーケティング的にも成功だったと思います。


和田
結果は必ず、数字に現れてきます。よりよいものをつくり続けるために、一番必要なのは"お客さまの声"を聞くことなのだと、改めて感じました。解決する内容さえ分かれば、技術的なものはわれわれの領域。問題が明確なぶん、正確でよりスピーディーに、よりよいものを提供することができます。


太田
技術というものは日々、進歩するもの。だからこそ開発者にゴールはありません。もっと早く、もっと精度を良く、もっと耐久性のある使いやすいものを!より生産性の高い製品を目指して、新たに「DC-645」の開発がスタートしました。ただ、もっともっとを欲張りすぎて、DC-545HCEXより大きさも倍であれば、値段も倍に…(苦笑)。


米田
現場を知るとあれもこれもやりたくなるのは、開発に限らず営業もマーケティングも同じ。内向きだった開発が外に向いたことで、一気に反動がきたのでしょう。やりたいように開発したら価格が2倍、というのは普通許されないこと。ただ幸い、デジタルプリンターの高速化や印刷品質の顕著な改善により、お客さまの仕事量自体が増加し、DC-645をDC-545HCEXの上位機種として発表することができました。

2005年~、DCシリーズがデュプロ精工の新たな柱に!POD市場の急成長と進化する技術開発

DCシリーズ


米田
"早い・フレキシブル・きれい"を追求するPOD市場の伸びは、いちじるしいものがあります。将来性のあるマーケットとして注目され、生産性の高いプリンタがぞくぞくと発売。だからこそ、後処理機にも生産性が求められるようになり、シリーズの中でDC-645の需要も伸びているのでしょう。


太田
当初、DC-545HCEXとDC-645の2機種をラインアップとして販売していました。お客さまの要望に応じて販売している中、DC-645の良いところを取り込み、DC-545HCEXをフルモデルチェンジすることに決定。DC-645で改善した精度と安定性を引き継ぎ機能性をアップさせたDC-615をリリース。デュプロのブランドイメージを高めるため、デザインにも統一感を強めました。


米田
小ロット向けのDC-615と、より仕事量の多いお客さま向けのDC-645。しっかりとコンセプトを分けた2つのラインアップができたことで、営業にもより力が入るようになりました。現在も続くPOD市場の顕著な成長という好条件もあり、私たちが自信を持っておすすめするDCシリーズは今では、デジタル印刷機に続くデュプロ精工のもう一つの柱として確立しつつあります。


太田
技術も市場も止まってはいません。もう既に次の開発ははじまっています。常に現場の声に耳を傾け、アンテナを広げることで、未来のニーズを捉え、お客さまに喜びを感じてもらえる製品を提供できるよう取り組んで行きます。市場と共に成長を続けるDCシリーズの更なる進化にご期待下さい。

メンバー紹介

  • 開発設計
    プロダクトリーダー
    大原 広行
    出身校/入社年
    大阪電気通信大学/1994年
    メッセージ
    橋本市出身。地元和歌山で就職を検討中にDMで求人を知る。面接時、開発者との面談で即決。決め手は第一印象が“楽しそう”だったから。
  • 顧客製品開発部門
    チームリーダー メカ設計担当
    和田 晃
    出身校/入社年
    富山大学/1997年
    メッセージ
    休日はもっぱら趣味の磯釣りをしに海へ行きます。
  • 開発設計
    プロダクトリーダー
    太田 竜一
    出身校/入社年
    大阪電気通信大学/2001年
    メッセージ
    和歌山市出身。大阪の大手開発設計会社に入社・勤務。何気なく参加したU ターンフェアで、会社概要を聞いたのが始まり。ラクラク通勤が一番!と転職を決意。
  • 開発設計
    マーケティング担当
    米田 友美
    出身校/入社年
    神戸市外国語大学/1996年
    メッセージ
    和歌山市出身。「英語がしゃべれる人」を探していると聞き、とにかく会社見学に訪れるといきなりの面接。決定打は、会社の家庭的な雰囲気と上役のユニークさ。

※掲載情報は取材当時のものです